長尾正大が雪舟展を見ての感想
絶筆の山水図と秋冬山水図を雪舟が意識して描いた真蹟と言うことで基準にし
雪舟らしい考え方かどうか?について他の作品を鑑賞した意見を書いてみました。
平成14年4月1日長尾正大
(番号は今回のカタログにあった作品番号です。)
21 ハスの花の絵は元からこのサイズでトレミングはされていない
花が中心におさまり、蘭の葉っぱのような草も、収まりが良い
たまたま収まりが良かったとしても 2枚とも同じサイズで、
バランスよく配置されているので、元からこのサイズと思われる。
36 雪舟はこのへんの絵からも 溌墨の応用を学んだと思う。
48 雪舟らしい絵、めりはりの効いた立体感がよくでている。
まよいを感じられない。
49 比較的ラフに描かれている、唐の様子を伝える雪舟らしい絵。
52 めりはりの利かし方に迷いがある、というか弱い感じがところどころ
ある。
中国で見ていろいろ考え方に影響を受けたか、それとも中国に行く前の若描きか?
木の幹の描きかたなどが、48とは少し違う。
53 54 55
雪舟の雪舟らしい所の感じが弱いと言うか ほとんど無いに近い。
色の濃淡と線で区切り、立体的に奥に奥にと、奥行きを出す
ことに対しての意識があまりない。
奥行きを出すことについて 考えがまとまる以前の作品か?
上手いは上手い。
61 うまい、タッチは違うが雪舟らしく前後関係を明確にしたいという
意識が働いている。
このような絵がこれだけかけても、このタイプの作品が少ない所に
雪舟の線で前後に区切るという描き方にこだわりがあったのを感じる。
62 63
どちらが本物といえば、いたんでいるが63が真筆に近い印象、
63は絹本のようである、62は紙かな?
なぜか会場で見た記憶が無いので、どちらが?と言うことをはっきりしたいなら
もう一度みて 検討したいが、カタログの写真で見る限り真筆は63だと思う。
62は丁寧すぎる、自分が模写をした時のような、慎重さと「どうしたら
似るかな?」っていう考えが感じられる。
樹木の縁取りの線の墨の濃淡、線の太さの強弱の無さに特にそれを感じる。
岩の墨の置方も63より単調になりがち。
64 下絵無しの一発描きの印象を受ける。
印刷で見るより、実物の方が(雪舟絵の中では)下手に見えた、一発描きというこ
とであれば力を入れて無いとも言えるが、もともとの力量はカタログの写真では
感じることができる。
実物見ての細かい所はわすれてしまった。
65 墨の色が落ちてしまってるのか、色が薄いのでめりはりが弱い伝雪舟と
実物見た後のメモ書きにはあるが、写真ではおかしな所はなく
なかなかいい作品だと感じる。
66 おどおど丁寧に描いてる印象、岩と岩の大きさ 岩の面の白の空間のあけかたが
似通っている、変化をつけたいところ。
晩年の雪舟なら線の太い細い 墨の濃淡にもっと全体から見たバランスをも考えた
変化をつけるであろうと感じる。
大作を描くにあたって、初期の段階か??慣れて無かったか?
このようにしてくれと お客さんから頼まれたのか、雪舟らしさのめりはりが
弱い。(雪舟らしさということで、けして下手だということでは無い)
67 うまい!写真ではわからない原画を見てなっとく 伝雪舟であるが真筆であっても
おかしくない上手さ。と見た後すぐのメモには書いてある、後から写真を見て
人物の顔って個性が出ると思うが、そのへんの事を見て無かったので、
どうかわからないが
風景の所に関しては、やはりうまい、雪舟らしさがよくでてる、樹木も岩も
点々の打ち方もバランスがいいので、責任が無い立場として意見を言うなら
伝から真筆に格上げあり。
68 人物がメインの為か、風景部分のちからの入れ方が弱いが、問題は無いと思う
やっぱり人に頼まれたのだろうか?丁寧に描かれていて
自分の好きな絵を勝手におもいさま描いたという印象はうすい。
69 70
雪舟らしからぬ印象、しかしこういう絵も描き得るというかんじがするので
これもありかも。
71 62と同じような丁寧に写したいんしょうがある、模写かも知れない。
72 構図、作品全体の墨の濃淡の付け方が雪舟の好きな雰囲気と違うが、頼まれて描い
たのならこれもまたありか?トロンとした頼り無い感じの線がきになる。
73 巻き物を少しずつ見て行く時の その時々の絵の中心(描いてる物以外の墨の濃淡
強弱による)の画面を上に下にの目線の移動 リズムがあって見ていて楽しくなる
様に上手く配置されている、しっかり構想を練り 下絵を描きじっくりと制作に取
りかかった力の入った優秀な作品だ。
みれば見る程 練って描いてる印象を受け感心する。
画面の疎密、モチーフの岩山から湖 また岩山など リズムをつけ緩急もいい感じ
で傑作だ。
画面全体の奥行き感、墨の強弱の流れのバランスなどは、82のようなラフな絵で
軽く描いてつめて行ったのだと思う、この絵を下絵無くして描いたのであれば、
本当に天才だといってもいいだろう、一発描きなら画聖というか画神だな。
77 ぶっつけ本番で描いたのか?小さい机に座って、ゆったりと人に見せるというより
自分の描く作業を楽しむ行為の為にぼつぼつ描いてる感じがする、雪舟の力を入れ
ている、飛び出す絵本のような強烈な印象は無い。
気負わずに趣味的な時間に自分の為に描いた絵か、もっと質の良い本物をだれかが
模写をした物か? 全体で見ると雪舟らしい墨の濃淡にリズムが無く、
巻き物を鑑賞する際その時々の場面の墨の強弱によっる中心が、ぼやけてよくわか
らない。伝雪舟が無難かも?
78 完成品がみてみたい。これはここを描いてくれって頼まれて描いたのだろう、実際
の風景を描くとなると、雪舟の好きな立体感を出すテーマを表現することが限られ
てくるので、それをどうしようか、という所で戸惑いというか苦労が感じられる。
いろいろ問題にされている、右下のシルエットの黒い二つの島も、絵の発注者に
絵の中に入れてくれって頼まれたのでは ないだろうか?
下にある、後から付け足した、なんて言われてる山並は、画面の構成上 左下が
海になって抜けてしまってるとバランスがとれないので、例えば83などの西湖の
構図を参考に、手前下に山並を描いて、流れとして右下の島の所から左、左中ぐら
いに上がって、右に天の立橋わたって 建物が沢山ある所いって、左にと
S字に画面に動きをだしてまとめようとしてる感じがする。
左側と下の山並を 後から足したという見方もあるので、そこを隠して絵を見てみ
ると たしかに、空と海でとってる余白の部分が、絵全体に対して少なく息苦しく
感じられる。
かといって山の高さ建物自体は頼まれたので デフォルメするには必要な部分ばか
りなので絵全体を大きくして 空間を取ることを選択したのだろうか?
立て横の比率がいくらでもいいのであれば、下部分だけ付け足すか、左側だけ付け
足すのでも 問題無さそうだが、比率も大切だったみたいで、屏風か ふすまかに
描くことを頼まれたのだろうか?
なんせ 下絵なので絵の技術的な完成度の話をしても意味が無いと思われる。
79 なにか言うことが思い付かない、遠くの山も近くの岩も、富士の周りの薄墨も
濃さが同じで、眠くなる絵です、だるく感じる絵を描いてくれと頼まれたのか?
模写か?有名な景勝地などは頼まれた絵のような気がします。
80 カタログの後ろに白黒で(292P)載ってるのとくらべると、こんな小さな白黒
でも、模本じゃない本物の貫禄を感じます、模本の方はやはりめりはりが弱く、
だるいです。本物は迫力があったと思います、形は同じでも、墨の強弱のバランス
によって こんなに印象が違うということから、雪舟の評価が高いのだろう。
81 絵地図の様、建物を一つ一つ説明的にきっちり描いてる所から、絵画というより
図的な要素で描かれたのだろうと思います。
82 ささっと描いた絵だというのが 素人目にも解ると思います。
これで完成とか下絵だとかは、本人の考え次第なのでなんとも言えないが、
少なくとも雪舟の下絵の描き方、制作を進めて行く途中の段階、作業の進め方を
知る為の参考になると思います。
力を入れた絵はだいたい画面全体の奥行き感、墨の強弱の流れのバランスなどを、
このようなラフな絵で軽く描いてつめて行ったのだと思う。
87〜92
この破墨山水図は、雪舟の絵に対する考え方を 単純に象徴的に伝える意味がある
のでは無いかと思う。
線で描く山水画は、線に頼ることで岩の形や樹木などかけるが、今までの作品で
説明して来たように、線や物の形に注意が行き過ぎると
一般的に墨の濃淡を おろそかにしがちになる傾向があるようで、
雪舟風の作品をかくのなら「絵は奥行き感が大切で それを表現するのに、
近景と遠景を区切る線も大切だが、じつは墨の濃淡も同じくらい重要だ忘れるな」
なんて気持ちがあるのだろうか?
これもまた82と同じように、雪舟絵画の制作の考え方 過程において重要な意味
を持つと思われる。
これ自体が、雪舟の目指した山水画と言うより、雪舟絵画の重要な要素の一つという
感じがします。
93 94
これらの絵画が基準で今まで話を進めて来ました、これが雪舟と違うなら
今までの話全部なしね(笑)
94のよさは、今までの話の流れでわかっていただけてると思いますが、ポイント
は、飛び出す絵本のような奥行き感、絵の中にある 濃い墨から薄い墨までの
濃淡の配置のバランス、中心の明確さ(対象物 色 墨の濃さそれぞれに)
現代と違う500年も昔に、この奥行き感はすごく面白い物だったと思う。
97 下絵をちゃんと描いて、丁寧に作った雪舟らしい花鳥画の代表といえる。
枝振りの浮き出て来方や、岩の手前に飛び出て来てる感じ、ハスの花や葉
鶴などそれぞれが、くっきり浮き出ているような めりはりのよさは、なかなか
他ではないだろうなと思う。
一休さんの屏風の虎の話も、雪舟の絵の虎じゃないのかなーって思うくらい
雪舟の絵には立体感があります。
梅の枝だの細い所まで、飛び出て来てると感じさせるのはすごいな。
98 上手い絵、しかし雪舟にしては、雅びな感じがする130の等春の絵を連想させる
飛び出す絵本的な立体感もあるがそれとともに、線のきれいさ真面目な優雅さを感
じる、唐に旅行なんかでき無さそうな、お坊っちゃん的な線質の印象をうける。
雪舟が第一に力を入れている奥行き感が押さえられて線がきれいだ。
注文受けての大作は今でもそうだが、雪舟工房みたいな感じで、依頼を受けて雪舟
が監督プロデューサー的な事をして 始めのアイデア 作品のチェックなどは
しっかりしたが、実際描いたのは、等春とか弟子だったとか?
99 画面構成は雪舟らしい構図になっているが、前の二つの作品に比べて、
話にならないくらい、線の変化 墨の濃淡の変化 空間の疎密の変化にとぼしい、
簡単な下絵だけ雪舟がかかわって 弟子に投げちゃった作品では無いだろうか?
構図でも雪舟がきっちり細部まで関わると、しまりがよくなるだろう。
竹の太さが全部同じってのは、いただけない。
年をとるに従って、弟子に任せる範囲が広がって来たのでは無いだろうか?
100 鴨がそれぞれ段違いの高さに配置され、見ている方向もそれぞれで、一つ一つが
独立して観賞もできるように、考えられている構図でいい。
102 牧渓風を頼まれて描いたと思われる。
木の描き方になどに、他の縁取りのしっかりした線を描いた絵の、縁取り前の
段階の様子がわかり、描き順の参考になる
雪舟を模写するにあたって参考になる作品。
104 点が怪しい、線に思い切りがかんじられない、おどおどしている。わからない。
105 構想から下絵 念入りに考えて作られた作品。
岩のゴツゴツとたいひして、ダルマが浮き出てくる感じに意識して描かれている
手前右の岩も縁取りをしっかりしていて、ダルマ見てる方向にまだ奥があるように
感じられる、35の絵より ダルマをメインに見せたいという気持ちが
はっきり汲み取れる。
ダルマも飛び出す絵本のように くっきり浮かび上がっているようだ。
114 だめやろ、薄墨の色がたんちょうすぎる、模写の絵のおっかなびっくり感が
感じられる、伝と言うか、模写人知らずぐらいで いいと思う。
130 うまい!!雪舟の偽物 作らしたらわからなさそう。
人物から後半疲れて はしょったけど、雪舟展の感想です。
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